生鮮野菜の市場規模推移と第1位がトマトである理由
当然のことですが、企業が農業参入を検討する上で、市場調査は欠かせません。その際に品目別の「市場規模」を把握しておくことは新規事業を行う際、必要不可欠でしょう。市場の動向を掴むことで、業界全体の需要や市場の拡大縮小の傾向がわかります。農業参入を慎重に決定するための参考になれば幸いです。


<目次>
 1.生鮮野菜の市場規模と日本の人口
 2.生鮮野菜市場規模上位7品目の推移
 3.すでに拡大しており今後さらに田畑を集約する「大規模農業者」
 


1.生鮮野菜の市場規模と日本の人口



「日本の農業界は『小規模農業者』『大規模農業者』『農業参入企業』の三者が共存する世界になる」の記事にて紹介しましたが、2021年度の生鮮野菜の市場規模は約3兆円あり、日本の人口は1.2億人です。2005年度から生鮮野菜の市場規模119%伸びています。一方で、日本の人口は98%なので2%減少しています。 日本人口は、微減にも関わらず、生鮮野菜の市場は伸びているのです。
また、「農業未経験の企業が農業参入して露地栽培で成功することができるのか」でも説明した通り、農業所得の高い「野菜作」、中でも「施設野菜」が成功の可能性が高いとお伝えしました。 企業の農業参入で「生鮮野菜」が圧倒的に多い理由が、「市場規模」と「農業所得(≒利益)」からくるものなのです。


2.生鮮野菜市場規模上位7品目の推移




それでは、市場が伸びている生鮮野菜についてもう少し詳しくみていきましょう。生鮮野菜の市場規模推移のうち上位7品目をグラフに示しました。 第1位はトマトです。2021年度で3,389億円のマーケットがあり、2位以下と2倍もの差があります。企業の農業参入といえばトマトと云われる所以はココにあります。
「企業の農業参入ではトマトが多いから競合が多いんじゃないか」と思われるかもしれませんが、トマトの動向については別の機会に説明をいたします。 また、本グラフが示すように、いちごを覗く6品目が2005年度から2021年度にかけて右肩上がりに市場規模が増加しています。 いちご以外の6品目の市場が伸びている理由について次章で説明します。


3.食生活やライフスタイルの変化が市場に影響を及ぼしている


皆さんは、30年前の市場規模1位の野菜が何だったかご存じでしょうか。 答えは「きゅうり」です。 30年前の日本における一般家庭の台所には「ぬか床」がありました。各家庭で漬物を漬ける習慣があったのです。しかし、現代において「ぬか床」を持っている家庭は少数といっていいのではないでしょうか。 背景として、昭和から平成に入り食生活の多様化はますます進み、パンやパスタ、麺類などを好む方が増えてきました。それに伴い「お米」の消費量が落ちるとともに、漬物の需要、漬物市場は年々縮小しています。また、女性の社会進出や夫婦共働きもあってか手間がかかるといった理由もあるでしょう。 一方で、昨今、「健康志向」への意識の高まりも相まって「サラダ」を食する人が非常に増えました。 1位トマト、2位たまねぎ、3位レタスなど「サラダ」となる野菜の市場規模が伸びている ライフスタイルや食生活の変遷が、「生鮮野菜」の需要が伸びたといえます。
企業が農業参入を検討するに当たり、参入する品目を決定する際に市場規模にも注目してみてください。